辞書の賢い使い方


辞書の「賢い」使い方と言っても、特別のノウハウがあるわけではない。むしろ答えは単純で、「時間をかけた丁寧な」使い方と言った方がよいかもしれない。紙の辞書でも電子辞書でも、方法は基本的に同じである。

まずは逆の、愚かな使い方から

  1. 最悪のケース:最初にでてきた意味・訳語だけ見て、それがいま調べている「語」の意味だと思ってしまう。

  2. 最悪に近いケース:2番目以降の意味・訳語も大急ぎで見る(「読む」ではない)ことは見るが、最後まできちんを目を通すこともなく、途中で「なんとなくそれらしく思える」意味・訳語が目に入ると、それを適当に(=いい加減に)選んで終わりにする。

  3. 最悪ではないとしても十分に愚かなケース:とりあえず全体をざっと見渡すが、用例や成句などを読むことなく、「なんとなくそれらしく思える」意味・訳語を探して、適当に(=いい加減に)選んで終わりにする。
紙の辞書を使っている場合は3までいく人がいるかもしれないが、電子辞書の場合はたいていは1、よくて2どまりではないだろうか。

では、賢い使い方とは? ― 「語」の意味の調べ方を、順を追って示すと

  1. 最初に、今調べているその「語」の「項目」全体を見渡し、その「語」の「基本的な意味」と、それがどのような「広がり」をもって使われるかを確認する。
    あわせて、太字で示されている熟語・慣用句・成句なども目を通しておく(ことによったら熟語・慣用句・成句に該当する使い方かもしれないのだ)。
    電子辞書の場合は、表示画面が小さいので、重要単語になればなるほど、全体を見渡すためには最後までスクロールしないといけないので、時間も手間もかかる。電子辞書を賢く使うためには忍耐が必要だ
  2. 全体を見渡したあと、もう一度最初から見直し、その「語」がどの意味で用いられているか確かめる。「語」の意味がわかったら、用例をよく読み、その「語」の使い方/使われ方を確認する。

  3. 全体を見直したあともその「語」がどの意味で用いられているかわからないときは、用例や熟語・慣用句・成句も含め、改めて全体を詳しく調べなおし、どの意味か見つけ出す。

 ― それでもわからないときはどうしたらいいでしょう? (以下に続く)

辞書を引く前に

 ― でも、がんばってみたのですが、どうしても意味がわかりません! どうしたらいいのでしょうか?

 ― 仕方がないですね、あきらめて先生に教えてもらうしかないでしょう。
 (教師の存在意義は、こういう時に質問し、わからなかったところを教えてもらえるところにある。)

 ― でも、学生ではないので、相談できる先生がいません。

 ― 残念ですが、その場合はもうどうしようもできません。
 (頼る教師がいないときは、自分でどうにかするしかない。どうにもならなければ、問題を放置するしかない。独学者の最大の悩みはここにある。)